ヤコブの祝福と死 創世記49章

 先にヨセフの二人の息子を養子として祝福したヤコブは、ここでは十二人の息子たちを呼び寄せて祝福しています。同様の祝福は四世紀後のモーセによる祝福にも見られます(申命記33章 シメオンは除外されている)。

 ヤコブの祝福の特徴をいくつか挙げてみましょう。一つ目は、それは単に十二人の息子たちについてというより、彼らから誕生するイスラエルの十二部族(28節)の将来を預言するような内容で、神からの託宣のようなものであったということです(1節「私は、終わりの日に おまえたちに起こることを告げよう」)。

 二つ目は、28節には「彼らを祝福したとき」とありますが、祝福だけではないということです。確かにヨセフについて語られる箇所では「祝福」ということばが繰り返されていますが、シメオンやレビの兄弟については、祝福とは反対の「のろわれよ」(7節)とのことばがあり、彼らの行動や性質が後の子孫に影響を与えていることを示しています。

 三つ目は、動物のイメージが多く用いられているということです。たとえば、ユダには「獅子」が(9節)、イッサカルには「ろば」が(14節)、ダンには「蛇」が(17節)、ナフタリは「雌鹿」が(21節)、ベニヤミンは「狼」が用いられています(27節)。

 四つ目は、祝福は均等ではなく(ユダとヨセフについては5節が割かれている)、また順番も皆が誕生順ではないということです。

 五つ目は、18節で祝福を中断するヤコブの祈りがあるということです。

 さて、ここでは十二人の中の何人かを取り上げてみましょう。

まずルベンについてですが(3-4節)、ルベンはヤコブの長子です。長子として本来もっている力や尊厳を父の名誉を汚した罪によって失い(創世35:22、Ⅰ歴代5:1)、「ほかの者にまさることはない」と宣告されています。

 次に、シメオンとレビですが(5-7節)、二人は一緒に取り上げられています。彼らの悪行に加担するなと警告されています。激しい怒りによって残虐な行為をした彼らの罪が指摘され(創世34章)、のろいが宣言されています。「彼らを引き裂き、イスラエルの中に散らそう」と言われていますが、シメオン族はユダ族の相続地に吸収され(ヨシュア19:1-9)、レビ族はそれぞれの部族の中に散らされていくこととなります(民数35章)。

 次は、ユダについてですが(8-12節)、他の兄弟たちより優位に立ち、支配する者となることが約束されています。「王権はユダを離れず」とありますが、王が出てくるとの約束は、神がアブラハムに約束されていたことで(創世17:6)、後にユダ族から出てくる「ダビデ」や「ソロモン」によって成就することになります。さらに、神がダビデに約束された「王座」はメシアによって成就することになります(Ⅱサムエル7:16)。

 最後は、ヨセフです(22-26節)。神による繁栄(22節)と保護(23,24節)と祝福が約束されています。25、26節には「祝福」ということばが繰り返され、彼が受ける祝福は彼の父祖や彼の兄弟たちが受けた祝福にまさることが強調されています。

 ヤコブは息子たちを祝福したあと、ヨセフ個人に前もって指示していたように、ここでは息子たちに改めて自分の埋葬についての指示を与えています(29-32節)。そこには神の約束に対する彼の揺るぎない信仰が明らかにされています。エジプトは寄留地であって目的地ではないのです。


                     このメッセージは2022.3.20のものです。