信仰を気遣う牧会者 Ⅰテサロニケ3章1-13節
パウロたちの宣教によってテサロニケの教会は誕生しましたが、パウロたちは長く留まって彼らを指導することはできませんでした。彼らのもとに何度も行こうと試みましたが、それは叶いませんでした(2:18)。この3章には、牧会者としてテサロニケの兄弟姉妹たちを愛し、彼らの信仰を心配し、気遣うパウロの姿をみることができます。そのことは「あなたがたの信仰」(2,5,6,7,10節)という言葉が繰り返されていることからもわかります。さて、パウロの気遣いはどのような点にみることができるでしょうか。
第一に、テモテを派遣したことにみることができます。パウロはテサロニケの兄弟姉妹たちのためにもちろん祈り続けていたでしょう。しかし、彼らのことを思うと居ても立ってもいられませんでした。それで忠実な弟子である「テモテ」を送ることにしました。パウロ自身、苦難の中働きを継続していましたので、誰かが共にいてくれることは心強かったと思いますが、テサロニケの兄弟姉妹たちのことを考えると信頼できるテモテを派遣するのがよいと判断したのです。
パウロがテモテを派遣した目的は、二つの視点から説明されています。一つは、テサロニケのクリスチャンたちの信仰の視点から、すなわち、強め励まし、苦難の中にある彼らの信仰が動揺することがないようにするためでした(2,3節)。パウロは彼らのところにいたとき、「苦難」が避けられないことを予告し、それに備えさせていましたが、心配だったのです。主イエスは弟子たちに苦難を予告し(ヨハネ16:44)、またパウロも苦難を予告しました(使徒14:22)。ですから、私たちは苦難を予想外のことではなく、クリスチャン生活の一部であると受け止める必要があるのです。
派遣のもう一つの目的は、「私たちの労苦が無駄にならないようにするため」(5節)とあるように、パウロたちの働きという視点から説明されています。「誘惑する者」とは「サタン」(2:18)のことです。サタン(悪魔)は、クリスチャンたちを神から引き離そうとしている霊的存在です。ペテロは「あなたがたの敵である悪魔が、吼えたける獅子のように、だれかを食い尽くそうと探し回っています」(Ⅰペテロ5:8)と警戒を促しています。
第二は、テモテの報告を受けての喜びや感謝を伝えていることにみることができます。派遣されていたテモテはテサロニケから戻って来て「良い知らせを伝えてくれました」。苦難の中でも彼らの信仰は守られ、彼らの愛は変わっていなかったのです。パウロのテサロニケの兄弟姉妹たちへの愛は、片思いではなかったのです(6節)。パウロがその報告を受けたとき「苦悩と苦難のうち」にありましたが、彼らの信仰によって「慰めを受け」(新共同訳「励まされ」)たのでした(テモテを派遣して信仰を励まそうとしたパウロは、今度は、テサロニケの兄弟姉妹たちの信仰によって励まされていることがわかる)。
パウロはテモテの良い報告を聞いて、不安は吹き飛び喜びに満たされています。そして、「どれほどの感謝を神におささげできるでしょうか」と、感謝の思いにあふれています。パウロの感謝はもちろん神にささげられていますが、その感謝の思いをテサロニケの兄弟姉妹たちに伝えることによって彼らを励ましているのです。
[第三は、テサロニケの兄弟姉妹たちのために「夜昼、熱心に祈ってい」ることにみることができます。— このポイントの説明は説教集で]
このメッセージは2022.5.15のものです。