サムソン(2) 女たちと祈り 士師記14-16章

 前回、サムソンの人生を「神から与えられた使命と力」という視点から見ました。今回は「彼が愛した女たちと彼の祈り」という視点から見ていきましょう。

 サムソンに登場する女性は三人で、どの女性も彼が愛すべきではない女性だったと言っていいでしょう。一人目は、「ティムナ」のペリシテ人です(14:1)。サムソンは彼女を見て(1,2節)、一目惚れして結婚したいと思ったのかもしれません(7節になって「その女と話した」とあるので、その女性がどのような人かを殆ど知らず、見た目の判断といった感じでしょう)。彼の「彼女が気に入った」(3,7節)との言葉は、彼の目に彼女が正しく見えたという意味です。もし彼が、異教徒との結婚に反対する両親の声に謙遜に耳を傾けていたなら(参 申命7:3)、最終的にはティムナの女性もその父も殺されることはなかったでしょう(15:6 二人は、サムソンとペリシテ人の争いに巻き込まれている)。安定した夫婦関係を築くためには信仰の違いは決して小さなことではありません。

 二人目の女性は、ガザの「遊女」です(16:1)。一夜をともにしただけの女性です。

 三人目の女性は、サムソンがはっきりと「愛した」と表現されている「デリラ」です(16:4 ペリシテ人であったかは不明だが、可能性は高い)。彼女とサムソンとのやりとりは詳しく記されています。彼女はペリシテ人の領主たちから報酬を約束されて、サムソンから力の秘密を執拗に聞き出そうとしています。一方、サムソンはデリラをはぐらかし、デリラとのやりとりをゲーム感覚のように楽しんでいるようにさえ見えます。デリラは何度も自分をだましていると訴え(16:10,13,15)、あなたの愛しているというのは口先だけなのねと迫り、ついにサムソンから本当のことを聞き出すことに成功します。サムソンは、自分がナジル人であり、髪にその力の秘密があることを打ち明けてしまいます。実際は、彼の髪の毛に力があったわけではありません。髪は彼がナジル人であることを示すしるしであり、その髪がある間は神がお与えになっていた力が彼に留まっていたのです。デリラはサムソンを裏切り、大きな報酬を手に入れ、一方、サムソンはペリシテ人によって捕らえられ両目をえぐり出され、青銅の足かせに繋がれ、牢の中で挽き臼を引かされることになりました。

 サムソンは性的な欲求を抑えることができず、信頼してはならない女性の虜になり、裏切られて敵の手に陥ってしまいました。なぜサムソンはデリラの魂胆を見抜くことができなかったのだろうか、危険を察知して離れることはできなかったのだろうか、と思ってしまいます。

 ときどき著名人の淫らな行為が報じられていますが、一度失った信頼を取り戻すことは容易ではありません。性という火をもて遊びながら、無傷でいられると考えている人がいるなら、サムソンと同様に愚かなのです(参 箴言6:27,28)。

 [サムソンの祈り(「主を呼び求めた」15:18,16:28)については、スペースの関係で省略します]


                 このメッセージは2022.9.25のものです。