ルツ4章11-22節 人々の祝福とゴーエール

 買い戻しの権利の譲渡の手続きが終わり、この手続きを見守っていた町の人々や長老たちは、譲渡の合法性を認めて、「私たちは証人です」と応答し、ボアズのために主の祝福を祈っています(11節)。

 人々の「あなたの家に嫁ぐ人」とはもちろん、ルツのことです。彼女がイスラエルの建国の母とも言うべき「ラケルとレアの二人のようにされますように」とは、子孫の繁栄を願うものです。次の、「エフラテで力ある働きをし、ベツレヘムで名を打ち立てますように」とは、ボアズの成功と幸せを願うものです。

 12節の祝福のことばには、「ユダ」と「タマル」から誕生した「ペレツ」が登場します。18節以降の系図からわかるように、ペレツはボアズの先祖であり、おそらくベツレヘムを支配していた一族だと思われます。ペレツの誕生の経緯は創世記38章に記されています。ペレツはアブノーマルな関係(舅ユダと息子の嫁タマル)から誕生していますが、ベツレヘムの民にとって自分たちの先祖として誇らしい存在だったのでしょう。

 13節は、舞台は町の「門」から変わって、おそらくボアズの家でしょうか。ボアズとルツの結婚、そして二人から「男の子」が誕生したことが記されています。「主はルツをみごもらせ」とあります。主はベツレヘムの人々の祈りに答え始められただけでなく、1章でナオミがやもめとなった嫁たちに「あなたがたがそれぞれ、新しい夫の家で安らかに暮らせるようにしてくださいますように」との祈りにも答えてくださったのです。さらに、主はボアズが「あなたがその翼の下に身を避けようとして来たイスラエルの神、主から、豊かな報いがあるように」(2:12)とルツを祝福したことばにも、ボアズ自身を通して、答えられていることがわかります。

 14節以降には、1章で主役だったナオミが再び主役として登場しています。ベツレヘムの女たちは、主をほめたたえて、「主は、今日あなたに、買い戻しの権利のある者が途絶えないようにされました」と述べています。「買い戻しの権利のある者」(ゴーエール)とは、ボアズのことではなく、誕生した子「オベデ」(「しもべ」、「仕える者」の意味)のことです。保護者のような意味で使われているのでしょう。「その子の名がイスラエルで打ち立てられますように」とは、成功を祈ることばです。ボアズには「ベツレヘムで」(11節)でしたが、オベデには「イスラエルで」と拡大しています。

 女たちは、誕生した子がナオミにとってどのような存在となるのか述べていますが(15節)、彼女の将来の明るい希望を表明しています。そして、ルツへの最高の賛辞が述べられています。それはナオミが今幸いな状況にあることを示しています。誕生した男の子を腕に抱き祝福する女たちに囲まれてナオミは満ちたりた思いだったのではないでしょうか。1章では、深い喪失感の中で、苦しみの言葉を口にせずにはいられなかったナオミです。しかし、4章にはそれとは対照的なナオミの姿があります。4章には、ナオミの言葉は出てきませんが、きっと主をたたえたのではないでしょうか。詩篇30篇5節には「夕暮れには涙が宿っても 朝明けには喜びの叫びがある」とあります。主はナオミの涙をご存知であり、彼女を見放されたのではなかったのです。ナオミには、その御手は見えなかったのですが、彼女の名前にふさわしいものを神は用意しておられたのです。

 [ボアズは主イエスの型(タイプ)であり、私たちのゴーエール(贖う方)は主イエスであることは、説教集を見てください。]



 このメッセージは2022.8.14のものです。なお、「ルツ記」の説教のさらなる詳しい要約は、長野聖書バプテスト教会説教集『主に望みを託して』(計6回、B5 22頁)におさめられています。