買い戻し ルツ3章14節-4章10節

 ルツは家に帰るとボアズが求婚を受け入れてくれたことを報告し、さらに「あなたの姑のところに手ぶらで帰ってはならないと言って」大麦六杯を持たせてくれたことを語りました。「手ぶら」という言葉は、ナオミが傷心のうちにベツレヘムに戻って来たときに「主は私を素手で帰されました」(1:21)と言ったときに使われています。神は嘆いていたナオミを慰め、その必要を満たすためにボアズを用いておられるのです。

 ナオミはルツからの報告を聞いて、事態がどのようになるかを「待っていなさい」と指示しています(3章3,4節では、具体的に行動するように指示していたが)。一つの不確定要素があり、ボアズやルツにしても、またナオミにしても神さまに信頼し委ねなければなりませんでした。たとえ、結果が自分の願った通りにならないとしても。

 時に、「待つ」ことは非常に辛いものです。あの人と結婚したい、との思いが強すぎて待つことができずに、ストーカーまがいのことをしてしまい相手に嫌われてしまう人がいるかもしれません。また、愚かにも恋敵と思われる人に酷いことをしてしまう人がいるかもしれません。不安や焦りから、何とか自分の力で物事を成功へと導こうとして、結果的に失敗してしまうことがあるのではないでしょうか。信仰によって行動するときがある一方で、信仰によって待つことがとても大切な時があります。

 ボアズはルツとの約束を守るためにすぐに行動を起こしています(4:1,3:13「朝」)。町の出入り口である「門」に座り、自分よりも「もっと近い買い戻しの権利のある親類」が通るのを待ちました(4:1)。そして、通りかかった親戚を呼び止めて座らせ、さらに証人となってもらう「長老十人」をそこに招いて座らせ、手続きに入ろうとして口を開いています。

 ボアズは親戚にナオミが「エリメレクの畑を売ることにしています」(4:3)と言っています。ボアズは、ナオミは畑を手放さなければならない状況にあり、親族としてその畑を買い戻すように求めました。もし買い戻さないなら、次の順位にある自分が買い戻すことを表明しています。

 近い親類は「私が買い戻しましょう」(4:4)と、即座に答えましたが、ボアズから単に畑を買い戻すだけではなく、「モアブの女ルツ」と結婚しなければならないことを知ったとき、彼は申し出を取り下げました。

 当初、親戚は畑を買い戻しても、最終的にはその畑には相続人がいなくなるので自分の所有地として残り、また、買い戻すことによって親戚としての責任を果たしたとして社会的な好評価も得られるので、何のリスクもないと考えたのでしょう。しかし、その畑を買い戻しても自分の物にならないことが分かり、さらにやもめの責任を負わなければならないことを知った時に、「自分のために」(22節)できないと辞退したのです。ボアズと親戚の買い戻す動機の違いが明らかになっています。

 ボアズは手続きを見守っていた人々、すわち、長老たちやそこに居合わせた人々に対して「あなたがたは・・・証人です」と手続きの完了を宣言しています(4:9,10)。ボアズは、「マフロンの妻であったモアブの女ルツ」を妻とする目的を「死んだ人の名を、その身内の者たちの間から、またその町の門から絶えさせないため」と述べています。ボアズの言葉には「二人のやもめをしあわせにするために」とのことばはありませんが、証人となった人々はそのことを理解していたことでしょう。求婚を受け入れた夜ボアズは、ルツに「私があなたを買い戻します」と誓いました(3:13)。神に委ねて待っていた者たちの願いはこのようにかなえられたのです。


                      このメッセージは2022.8.7のものです。