偽教師への対処 テトス1章10-16節

 実は、反抗的な者、無益な話をする者、人を惑わす者が多くいます。特に、割礼を受けている人々の中に多くいます(テトス1章10節)。



 牧会書簡に共通して扱われているのは偽教師の問題です。偽教師の問題は3章9-11節でも扱われています。また、1章9節の「反対する人たち」や2章8節の「敵対する者」とは偽教師のことが念頭にあるのでしょう。

 クレタの教会を惑わしていた偽教師はどのような者たちで、どのようなことを教えていたのでしょうか。その短い言及から多くのことはわかりませんが、彼らについては「割礼を受けている人々」(10節)や「ユダヤ人の」(14節)という言葉から、ユダヤ人たちだったと考えられます(クレタにはユダヤ人たちの共同体があったことが知られている)。

 パウロは彼らの素性を三つのことばで説明しています。一つ目は「反抗的な者」です。彼らは権威や教会の規則に従おうとしない者でした。二つ目は「無益な話をする者」(マタイオロゴス)です。「無益な」(マタイオス)は、異邦人の神々や礼拝を見て、ユダヤ人が軽蔑して使った語でしたから、そこには皮肉が込められているのでしょう。三つ目は「人を惑わす者」(共同訳「人を欺く者」)です。彼らは、無益な事実に基づかない架空の話をするばかりでなく、「真理に背を向けている人たち」であり、人々を真理から遠ざけていた者たちだったのです(Ⅱテモテ4:4)。彼らのような者たちが「多く」いて、「いくつかの家庭をことごとく破壊して」いたというのですから、事態は深刻です。パウロは彼らの動機を「恥ずべき利益を得るために」と指摘し、彼らの「口を封じなければなりません」と指示しています。それは偽教師たちによる被害が及ばないようにするためです。13節には「彼らを厳しく戒めて、その信仰を健全にして・・・心を奪われないようにさせなさい」との指示もありますが(参 Ⅱテモテ2:25)、その「彼ら」とは偽教師たちの影響を受けていた者たちのことでしょう。

 偽教師たちはどのような点で誤っていたのでしょうか(14-16節)。

 <以下の三つのポイントの説明については説教集で確認してください。>

 一つ目は、彼らは「人間の命令」に重きを置いていたということです(14節)。 

 二つ目は、彼らは「きよめ」について誤った理解をしていたということです(15節)。

 三つ目は、彼らは「告白と行動が矛盾してい」たということです(16節)。

 パウロは偽教師たちの素性を指摘し(10節)、彼らの「口を封じなければなりません」と命じました(11節)。10節の「実は」(ガル)と訳されている接続詞は、二つの段落(5-9節、10-16節)を結ぶ重要なことばです。以下にその理由を説明しているからです。パウロはテトスに「健全な教えをもって励ましたり、反対する人たち戒め」ることができる長老を町ごとに任命するように命じました。なぜなら、人々を惑わす偽教師が多くいたからです。

 いつの時代においても誤った教えをもってキリスト者たちを惑わしている偽教師たちがいます。だからこそ、彼らにしっかりと対応するために、5-9節に挙げられた資格を備えた長老たちが任命される必要があるのです。教師たちの不足が懸念されつつある中で、健全な教えと生活をもって会衆を導く指導者たちがそれぞれの教会に立てられますように。


                       このメッセージは2021.10.31のものです。