ハナンヤ 偽預言者 エレミヤ28章

    

 そこで預言者エレミヤは、預言者ハナンヤに言った。「ハナンヤ、聞きなさい。主はあなたを遣わされていない。あなたはこの民を偽りに拠り頼ませた。」(エレミヤ書28章15節)

 エレミヤを苦しめたのは、一つは迫害する者たちでした。郷里アナトテの人々(11:21,22)、祭司たち(26:8,11)、ユダの首長たち(38:4)から身の危険にさらされています。もう一つは偽預言者たちでした。その代表的存在が「ハナンヤ」です。この28章にはエレミヤとの対決の場面が記されています。

 エレミヤ書23章を読むと、偽預言者たちの堕落や特徴についてのまとまった言及があります。また29章を読むと、エレミヤはエホヤキン王の時にバビロンに捕囚となった人々に手紙を書いていますが、彼らに対して偽預言者たちにごまかされないようにと警告しています(29:8,9)。そこには偽預言者として「コラヤの子アハブ」や「マアセヤの子ゼデキヤ」(29:21)、「ネヘラム人シェマヤ」の名前が登場しています。これらの箇所から見えてくる偽預言者の特徴とは何でしょうか。まず、主の御名によって預言をしているが、彼らは神から遣わされた者ではないということです(14:15,23:21,27:15,29:9,31)。次に、彼らのメッセージは神からのものではなく、自らの夢や幻を語っていたということです(14:14,23:16,25,32)。次に、彼らは人々を罪の悔い改めへと導いて神に立ち返らせるのではなく、罪の現実を肯定し、偽りの安心や期待を約束していたということです(23:14, 17:22,28:15,29:31)。これらの特徴はハナンヤにも見られるものです。さて、ハナンヤとエレミヤとの対決を具体的に見ていきましょう。

 時は、ユダの最後の王ゼデキヤの治世の四年のことです。エレミヤは、神から命じられて首に「縄とかせ」(本来それは、雄牛につけるくびきとそれを固定するロープ)をつけていました。それはバビロンに服しなさい、との神からのメッセージを行動によって表したものでした。

 ハナンヤは主の宮で、祭司たちと民全体の前で、エレミヤに「主はこう言われる」と言って、バビロンによって奪われた宝物が戻ってくる。また、捕囚となった王や民が戻ってくる。それも「二年のうちに」と預言しました。それを聞いたエレミヤは、「そのとおりに主がしてくださるように」と答えたあと、神が本当に遣わされた預言者であるかどうかは、その預言の成就によって確かめられると答えました(参 申命18:20)。

 ハナンヤはエレミヤが首につけていた木のかせを砕き、先に述べた預言のことばをその行動で示しました。二年のうちに主がバビロンのくびきから民を解放してくださると。エレミヤはあえて、その場では反論することはしませんでしたが、主はハナンヤに対することばをエレミヤに示され、バビロンのくびきが厳しくなること、そして、ハナンヤが民を「偽りに拠り頼ませた」と断罪し、死の宣告をしています。その後、神はエレミヤの正しさをハナンヤへの裁きをもって示されたのでした。

 エレミヤの「バビロンに仕えて生きよ」(27:17)、そして捕囚からの帰還は「70年」も先のことだというメッセージは民にとって期待したものではなく、エレミヤこそ、偽預言者のように見えたことでしょう。しかし、神のことばを忠実に語り続けたエレミヤこそ、真の預言者だったのです。

 預言者とは、神のことばを神から預かり、人々に語るために召された者です。ですから、忠実にそのメッセージを伝えければなりません(参 エレミヤ23:28)。聖書は偽預言者(偽教師)について警告しています(マタイ7:15,24:11,Ⅱペテロ2:1)。罪の現実に向きあわせることなく、根拠のない偽りの安心や期待に答えようとするメッセージに気をつける必要があります。

               このメッセージは2020.7.12のものです。