メフィボシェテ 恵みを忘れない Ⅱサムエル記9章
ダビデは言った。「恐れることはない。私は、あなたの父ヨナタンのゆえに、あなたに恵みを施そう。」(Ⅱサムエル9章7節)。
「メフィボシェテ」という名前を聞いた事があるでしょうか。彼はイスラエルの初代の王となったサウル王の孫に当たり、父は「ヨナタン」です。残念ながら、祖父と父は彼が五歳の時、ペリシテ人との戦いで戦死してしまいます。その訃報が届いたとき、乳母が急いで逃げようとして彼を落としてしまい、両足に障害を負ってしまいます(Ⅱサムエル 4:4,9:13)。父が亡くなった後、彼はひっそりと「アンミエルの子マキルの家」で世話を受けていたと思われます(5節)。彼には「ミカ」という子どもがいました(12節)。
彼のもとにある日突然、ダビデ王から呼び出しがきました。祖父が執拗にダビデの命を付け狙っていたことを考えると、王朝安定のために前王の子孫を見つけ出し、根絶やしにしようとしているのかもしれないと、彼は恐れたかもしれません。しかし、ダビデは復讐のためにではなく、「神の恵みを施」すために捜し出し、呼び寄せたのでした(3,7節)。
メフィボシェテがダビデから受けた「恵み」とは、具体的にどのようなものだったでしょうか。まず、「必要の供給」(生活の保障)です。彼の必要のために、サウル王の地所が彼に返され(7,9節)、「ツィバ」と彼の家族ら(十五人の息子、二十人の召使い)がメフィボシェテに仕えるために任命されました。彼らの働きによってメフィボシェテの必要は十分に満たされたことでしょう。神は私たちにも必要の満たしを約束してくださっています(参 ピリピ4:19)。
次は、「名誉」(特権)です。王の息子のひとりのように王の食卓に連なり、王と親しく交わることが許される栄誉が彼に約束されました(7,11,13節)。私たちは「神の子」として、父なる神との親しい交わりが約束されています。
次に、「安全」です。後にダビデはギブオン人たちから、サウルの子孫から七名を差し出すように要求されます。しかし、ダビデはこのとき「メフィボシェテ」をそのリストから除外し、彼を守りまし(21:7)。私たちもキリストにあって敵から守られています(ローマ8:31-)。
メフィボシェテがダビデから「恵み」を受けた理由は何だったでしょうか。彼にそれを受けるにふさわしい人柄や功績があったからでしょうか。そうではありません。「ヨナタンのゆえに」です(1,7節)。ヨナタンはダビデと無二の親友でした。本来なら、ヨナタンは王位を継承する王子であり、父もヨナタンに王位を継がせたいと願っていました(Ⅰサムエル20:31)。しかし、ヨナタンは、自分ではなくダビデが次期王となるべく神に選ばれた器であることを受け入れていました(Ⅰサムエル23:17)。父がダビデに対して敵意をむき出しにする一方で、ヨナタンはダビデのためにとりなし、ダビデの逃亡を助け、逃亡中のダビデを訪ねて励ましたりしました。ヨナタンは、ダビデと契約を結んでいました(20:15-17、18:3、23:18)。それゆえに、メフィボシェテは恵みを受けることができたのです。今日、私たちは「キリスト」のゆえに、その恵みにあずかることができる者とされているのです(ローマ5:2)。
メフィボシェテは、しもべのツィバに欺かれて、ダビデが息子アブサロムの謀反によって都落ちしなければならなかったとき、ダビデに同行することはできませんでしたが、受けた恵みを忘れることはありませんでした(19:24-)。私たちも受けた「神の恵み」を忘れないようにしましょう。
このメッセージは 2020.9.20 のものです。