新しい生き方(2) エペソ4章28-30節
パウロが勧める新しい生き方の三つ目と四つ目を見ていきましょう。ここには三つの要素があります。まず否定的な勧告(禁止命令)があり、次に肯定的な勧告があり、その動機づけ(理由)が示されています。
パウロが勧める生き方の三つ目は、「誠実に働き、分かち合う」ということです(28節)。否定的な勧告は、「もう盗んではいけません」です。「盗む」ことは旧約・新約聖書を通してはっきりと禁じられています(出エジプト20:15、レビ19:11、Ⅰコリント6:10など)。
パウロの肯定的な勧告は、「労苦して働きなさい」です。「自分の手で正しい仕事をし」の「正しい」(アガソス)は本来「善い」という意味で、共同訳は「真面目に」と訳しています。「盗む」という悪い手段に対して、正しく誠実な手段で働くということでしょう。
パウロは勧告の動機づけとして、「困っている人に分け与えるため」としています。私たちは自分や家族の生活を支えるために懸命に働きます。しかし、困っている人を支えるためという視点をもっているでしょうか。
エルサレムの初代教会では、富める者たちと貧しい者たちが支え合う姿がありました(使徒4:32-35)。それは強制されたものではなく、愛に基づく自発的な分かち合いでした。パウロは諸教会にそのような分かち合いを勧めただけでなく(Ⅱコリント8章)、自らも主イエスのことばを念頭に置きながら、それを実践していました(使徒20:35、ガラテヤ2:10)。
パウロが読者たちに求めている新しい生き方は、誠実に働き、自立した生活をするだけではないことがわかります。物やお金をどのように得て、それをどのように使うかということは、その人の価値観を端的に表すものです。私たちは貪欲になって不正な手段を用いようとしていないでしょうか。また、利己的になって自分の必要ばかりに目を注いでいないでしょうか。
パウロが勧める新しい生き方の四つ目は、「ことばを、建て上げるために用いる」ということです(29-30節)。パウロはまず、「悪いことばを、いっさい口から出してはいけません」と命じています。「悪い」と訳されたことば「サプロス」は、「腐った」という意味です。「悪いことば」とは、文脈から考えると、人を傷つけることば(参 箴言12:18)や、人に害を与えるような中傷や陰口などを考えることができるでしょう(参 4:25、5:3-4)。
パウロの肯定的な勧告は、「むしろ、必要なときに、人の成長に役立つことばを語り」なさい、というものです。「成長」と訳されている「オイコドメー」という語は、教会形成や教会の成長の文脈で用いられています(4:12、16)。パウロが考える「悪いことば」とは、個人的な問題だけではなく、教会の一致や成長を損なうことばでもあることがわかります。
パウロの動機づけは、「神の聖霊を悲しませてはいけません」ということばに見出すことができます。この表現から分かることは、聖霊が人格を持ったお方であるということです。聖霊は、キリストのからだである教会のうちにも、キリスト者一人ひとりのうちにも住まわれているお方です。聖霊は、愛する対象がご自身の働きやご性質に相容れないことをするとき、見捨てて去るのではなく、愛ゆえに悲しまれるのです。ところで、私たちの言動は聖霊を悲しませていないでしょうか。
このメッセージは2026.5.31のものです。


