信仰による応答 創世記11章27節-12章9節
族長の一人である「アブラハム」(創世17:5「アブラム」→「アブラハム」)をこれから取り上げていきます。アブラハムは聖書では、神の「友」や「しもべ」と呼ばれています。それらは神との親密な関係性を示していますが、彼は決して完璧な人間であったわけではありません。神の恵み深いお取り扱いの中で彼の信仰は形成されていったのです。
アブラハムが神の召しを受けたのは、紀元前約2000年のことであり、「カルデア人のウル」においてでした(参 創世15:7,ネヘミヤ9:7,使徒7:3-4)。12章1節の神がアブラハムに語られた「あなたは、あなたの土地、あなたの親族、あなたの父の家を離れて、わたしが示す地へ行きなさい」との言葉は、「ウル」で与えられた言葉なのか、改めてハランでも与えられた言葉なのか意見が分かれますが、いずれにしても使徒7章4節からは、アブラハムがハランを旅立ったのは父テラの死後であることがわかります。
12章9節までには、アブラハムのカナンの南部「ネゲブ」までの旅路が記されています。「ウル」から「ネゲブ」までのアブラハムの信仰による応答を見ていくことにしましょう。
第一に、アブラハムの信仰による応答は、神の言葉に従順に従ったことに見ることができます(1節「行きなさい」4節「出て行った」)。これまで生活してきた「土地」、親しい関係(「親族」、「父の家」)を離れることは、安全で安定した生活の基盤を捨てる強い覚悟が必要だったでしょう。年齢的にも若くなく、妻のサラ(参 17:15「サライ」→「サラ」)との間に一人の子もいない状態だったのですから、なおさらのことです。
神は「行きなさい」と命じられた後に、「祝福」という言葉を五回繰り返して、七つの約束をしています。一つ目の「あなたを大いなる国民と」するには、子孫の数が増えることと土地の約束が暗示されています(土地については7節ではっきりと約束されている)。二つ目の「あなたを祝福する」には、子孫の繁栄ばかりでなく、物質的な豊かさが約束されています(参 24:35)。 三つ目の「あなたの名を大いなるものとする」とは、彼の影響力が世代を超えて広がっていくということです(参 11:4)。四つ目の「あなたは祝福となりなさい」とは(正確には命令であるが)、祝福の確実性を示すものです。五つ目と六つ目の「あなたを祝福する者を祝福し、あなたを呪う者をのろう」とは、対になっていて、アブラハムの保護を約束するものです。最後の7つ目の「地のすべての部族は、あなたによって祝福される」とは、アブラハムが神の祝福を仲介する者となるということです。
神の約束は、アブラハムの現状を考えるなら現実ばなれしたものであったでしょう。そして、その多くはアブラハムが生きているうちに実現するようなものではなかったとも言えるでしょう。しかし、彼は神のことばに信頼して信仰によって出て行ったのです(参 ヘブル11:8)。
第二に、アブラハムの信仰による応答は「祭壇」を築いていることにみることできます(12:7,8,13:18,22:9)。それは礼拝と言い換えてもいいでしょう。信仰は一度限りの応答ではありません。確かに信仰による最初の一歩はとても重要ですが、それに信仰の応答としての礼拝が続くことは自然なことです。私たちも神への礼拝をもって歩み続けていきましょう。
このメッセージは2024.9.22のものです。