最後のメッセージ Ⅱテモテ4章1-8節

 もし自分の人生が残り少ないとわかったなら、次の世代にどのようなメッセージと託したいと思うでしょうか。今日は、使徒パウロが死を前にして、愛弟子であるテモテにどのようなメッセージを託しているのかをみていきましょう。

 パウロは具体的な内容に入る前に「厳かに命じます」と言っています(1節)。なぜでしょうか。それはメッセージの重要さだけではなく、キリストにある私たちの人生のすべてが「神」と「キリスト・イエス」の御前にあり(参Ⅰテモテ5:21)、それを正しく評価される時が来るからです(参 Ⅱコリント5:9)。言い換えるなら、私たちはクリスチャンとしてどのように歩んだかという説明責任を負っているということです(参 マタイ25:14)。

 パウロは後継者であるテモテに、2節に五つ、5節には四つ、計九つの命令を託しています。簡単に見ていきましょう。一つ目は「みことばを宣べ伝えなさい」です。「みことば」とは「聖書」(3:15,16)、「健全な教え」(3節)、「真理」(4節)のことです。なぜそれを宣べ伝える必要があるのでしょうか。それは神が啓示された唯一の救いのことばであり、健全な信仰生活のために不可欠なものだからです。二つ目は「時が良くても悪くてもしっかりやりなさい」です。「しっかりやりなさい」とは、心の準備をしていなさい、ということです。三つ目の「責めなさい」と四つ目の「戒めなさい」は同義語で「訓戒しなさい」ということです。五つ目は「勧めなさい」です。先の三つの命令を修飾するのが「忍耐の限りを尽くし、耐えず教えながら」ということばです。だれかの罪や過ちを取り扱うことは容易ではありません。忍耐や正しい教えがなければなりません。配慮のない対応によって教会はどれだけのダメージを負ってきたことでしょうか。

 パウロが2節で命じる理由が、3節と4節に示されています。それはクリスチャンたち(会衆)が、健全な教えを拒み、真理から離れるような時代になっていくからです。パウロは人々がその言葉が真理であるかどうかではなく、自分の聞きたいことばかどうかによって教師を求めるようになることを指摘しています。

 5節では「けれどもあなたは」と、そのような時代になるからこそ、あなたはどのように働きをすべきかを四つ命じています。その一つ目は「どんな場合にも慎みなさい」です。これは冷静に対応できる態勢でいなさい、ということです。二つ目は、「苦難に耐えなさい」、三つ目は「伝道者(エペソ4:11 共同訳「福音宣教者」)として働きなさい」、四つ目は「自分の務めを十分に果たしなさい」です(これまでの命令を総括するようなものと言えるでしょう)。

 パウロは九つの命令をテモテに託しました。その理由は、自分の死が近づいているからです。6節では、今迎えようとしている死について語り(現在)、7節では、これまでの働きをふり返り(過去)、8節では、備えられている希望について語っています(将来)。[6-8節の説明については説教集をご覧ください]

 パウロはテモテに、しっかりと託すべきメッセージを持っていました。さて、私たちは次の世代にしっかりと託すべきメッセージを持っているでしょうか。託すためには、今、私たちがそのメッセージにしたがって生きている必要があります。


                             このメッセージは2021.8.8のものです。